日本の飲食業、専門性を活かした事前調査と現地視察で台湾のビジネスチャンスをつかむ

ミニトマト

日本某県で既に数店舗の飲食店を経営しており、台湾への進出にも成功されているA社。A社は緻密な事前調査とオーナーシェフの専門性を活かした独自のアンテナによる現地調査で台湾のビジネスチャンスをキャッチしました。

緻密な事前調査

A社の看板メニューはとある洋食。A社の国際担当役員は長年コンサルタントをやっているだけあって、A社の看板メニューが台湾で少し話題になり始めていること、店舗数はごく限られますが、日本の他社も同種のメニューで台湾に進出していることは、調査済でした。

そこでさらなる市場調査として、A社より有料で追加調査の依頼を受け、弊社で 先行して台湾に進出した他社の店、台湾全土で類似メニューを出している店、チェーン店を徹底的に調べ上げ、リストを作成しました。

現地視察では、リストの店を訪問し、メニューや価格だけでなく、内装や雰囲気も含めて調査を行いました。そういった店のメニューの価格帯などを調べ、A社の看板メニューが日本とほぼ同じ価格で出されても台湾の人に受け入れられるだろうという確証を得たのです。

調査は方法論が大事

最近はコストの関係でこういった調査の場合、ネットを使うことが多いと思いますが、社会人としての経験が浅い人だと何も仮説や方法論もなく「行き当たりばったり」で調べてしまうことがあります。

例えばA社の看板メニューや類似メニューを中国語に翻訳して検索エンジンで検索するとどうでしょう?多くの場合、大量の結果が出てきます。これを一つ一つチェックしているうちに、訳が分からなくなってしまいます。

弊社では、データをどういった方法で集め、どう絞り込んだのかは、 仮説や方法論に基づき、一定の基準を設定して行っています。そうすることで後でデータが十分であったかどうかを検証することもできるし、追加で不足している部分を調査することもできるのです。

台湾の人気イタリア料理店をチェック

一方、A社のオーナーシェフは職人らしいやり方で現地調査をすることにしました。A社の看板メニューにこだわらず、台湾各地で地元の人に人気のある店に食べに行くことにしたのです。選択した店の中には多くのイタリア料理店が含まれていました。

A社のオーナーシェフは元々イタリア料理のシェフ。 日本の1980年代後半から1990年代のバブル景気のころに、イタリア料理が「イタめし」としてブームとなり、本場の味やワインが広く紹介され、日本人の舌もグローバル化していったのを間近で見ていました。台湾でもイタリア料理店に行くことで、台湾人の舌がグローバル化しているかどうか測れるかもしれないと考えたのです。

これは結果的には意外に当たっていました。例えばワインの品ぞろえを見てみると、カリフォルニアやチリなどの安くてもおいしいワインも置いているのかを見ることで、ステイタスや流行でワインを飲む人が多いのか、本当にワインの味を楽しんでいる「通」が多いのかをうかがい知ることができました。

オーナーシェフの現地での「気づき」

現地視察でオーナーシェフが気づいたことは、台湾では飲食店の内装は日本以上にお金をかけており、流行も進んで取り入れているが、しかし流行を気にするあまり、どの店も同じように見え、個性に欠ける感じがあることでした。

内装にお金を掛けすぎるとその回収に苦労するのは明らかです。台湾のやり方はすぐに店が流行ればよいですが、じっくり腰を据えて、良いものを広めていきたいというオーナーシェフのやり方とは異なるものでした。

また安易にメニューを増やしすぎ、その分看板メニューの味や店の雰囲気づくり、サービスなど飲食業としての基本的な部分がおろそかになっている店も多いことを実感しました。

どこでも「本物」が生き残る

しかし一方で店の個性を追求し、上記のこともしっかり心掛けている店もあり、そういう店は長く経営しており、一定の常連客が付いている事実も見逃しませんでした。

先ほども触れましたが、オーナーシェフは日本のバブル景気のころに、イタリア料理が「イタめし」としてブームとなり、その後定着したのを間近で見ており、「ブームではなく、本物が生き残る」という信念をお持ちでした。

その経験に併せ、先述の台湾現地で見た長く生き残っている店を見て、今はたとえ違っていても近い将来は、台湾においても「本物が生き残る」という原則は当てはまるに違いないという確信を台湾現地で強めることになったのです。

自分の専門性を軸に独自のアンテナを広げる

A社はイタリア料理など、オーナーシェフの飲食業における長年の経験を軸に独自のアンテナを広げた結果、独自の「気づき」や確信を得ることができました。また緻密な事前調査で確信をさらに強めることができました。

中小企業の経営者や幹部の方は長年の経験で独自の専門性をお持ちのはずです。その専門性を軸に自分のアンテナを広げ、台湾現地での視察に臨んでこそ、初めてビジネスチャンスを「肌」で感じ取ることができるのです。

参考文献 (クリックすると一覧を表示)
  • 「イタめし」「ティラミスブーム」とは何だったのか?バブル時代に爆発的な流行を巻き起こした舞台裏 – ぐるなび みんなのごはん (http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/yajirobe/4558、2019年06月24日閲覧)

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