三国志に学ぶ、なぜ日本の中小企業の海外進出が重要なのか?

蜀漢北伐(イメージ)

グローバル化で海外市場へのアクセスも容易になっています。そういった中、弊社では日本の中小企業こそ海外進出すべきであると考えています。その理由を三国志のエピソードを例にとりながら説明したいと思います。

諸葛孔明が守らず攻めた理由

三国時代、三国の1つ、蜀漢であった宰相、諸葛孔明は天下統一のため、北伐、つまり北にあった曹魏を討とうとしました。その際に蜀漢の皇帝(後主)に奏上したといわれる「後出師表」で北伐を行った理由が記されています。

漢賊不兩立,王業不偏安 (蜀漢と曹魏は並び立たず、王朝は国土の一隅では成り立たない)

今、自分たちが収めている領土が豊かで広かったとしても、国土全体でみると一部に過ぎず、それは一時の安泰でしかないということを述べています。

然不伐賊,王業亦亡 (賊を討伐しなければ、いずれ王朝は滅亡する)

自分たちが討って出なければ、いつか相手から攻められて滅亡してしまうだろうという危機感を述べています。

唯坐而待亡,執而伐之 (座して滅ぶのを待つなら、これを討伐すべし)

何もせずに相手から攻められて滅亡するくらいなら、積極的に打って出るべきだという決意を述べています。

日本市場だけに安住することの危険性

「漢賊不兩立,王業不偏安」をビジネスに置き換えると中小企業が日本市場だけに安住することの問題意識に置き換えることができると思います。日本市場はそこそこの規模があるし、悪くはないがそのままで良いのかということです。

外国企業も日本市場に進出する可能性

「然不伐賊,王業亦亡」 をビジネスに置き換えると、日本の中小企業は海外市場に出て行かなくても、海外企業が日本市場に進出してくる可能性に置き換えることができます。海外からみれば日本もそこそこの規模がある市場なので、魅力的に見えるはずです。

もし進出してきた外国企業が日本の中小企業以上のコスト競争力や技術力を持っている企業だったら・・・日本国内だけに目を向けていては兆候さえつかめず、進出された段階で経営は難しくなってしまうでしょう。

技術の漏洩や模倣問題を理由に海外進出をためらう会社もありますが、良い物であれば、海外企業も日本に来てそういった会社の製品や技術を模倣したり、盗用したりする可能性は大いにあります。グローバル化が進み、日本にいたからといって絶対的な防御にはならないのです。

むしろ海外進出に積極的に取り組むべき

「唯坐而待亡,執而伐之」をビジネスに置き換えると、海外企業に自分の市場に進出されるくらいなら、むしろ積極的に海外市場を攻略すべきということになります。海外市場を意識することで、例えば以下のような効果が期待できます。

  • 新たな市場の獲得
  • コスト削減 (より安い原材料の調達や人件費が安い国に生産拠点を置くなど)
  • 新たな需要の発掘

またビジネスのサイクルがマンネリ化し、停滞感に悩む企業の場合、グローバルでビジネスを考えることによる意識変革の効果も見逃せません。

グローバルニッチ:ニッチをグローバルで束ねる

大企業の参入が困難なニッチ市場を手掛ける中小企業も多いと思いますが、そういう中小企業こそニッチな需要をグローバルで発掘し、束ねることで市場をより拡大・分散できる可能性があります。

特に近年は「グローバルニッチ」が注目されています。定義が曖昧なこともあって、大企業がグローバルニッチの例として出されることも多いですが、中小企業の例ももちろん多数ありますし、中小企業こそ目指す戦略だと思います。

「やりたいこと」を守るために打って出る

海外進出に成功している中小企業を見ると、単純に売上を増やすことを目的にしているわけではないことが多いように思います。どちらかというと日本市場で生き残るための「信念」を海外でも持ち続けている中小企業が多いように思います。

そもそも創業時は「やりたいこと」を抱きつつ創業している企業がほとんどだと思います。そしてそれは社会的に求められている「やるべきこと」や自社の能力を踏まえた「やれること」との重なる範囲で少しずつ実現していくという過程を経ているはずです。

特に中小企業の場合は、大企業では市場規模が小さすぎてできないが、中小企業だからこそやっていけるビジネスをやっていることも多いと思います。しかし日本国内だけだと市場が早期に飽和状態になった際、「やりたくないこと」もやってしまう可能性は高いと言えます。

創業時にあった「やりたいこと」を守るために海外市場に打って出るというのが日本の中小企業の取るべき道の一つであると思います。

参考文献 (クリックすると一覧を表示)
  • アイキャッチ画像:Wikipediaより・筆者で加工 (https://commons.wikimedia.org/w/index.php?title=File:%E4%B8%89%E5%9C%8B264.jpg&oldid=317306601、2019年06月29日閲覧)
  • 後出師表 – 維基文庫,自由的圖書館 (https://zh.wikisource.org/w/index.php?title=%E5%BE%8C%E5%87%BA%E5%B8%AB%E8%A1%A8&variant=zh-hant&oldid=1390936、2019年06月29日閲覧)
  • 中小企業によるグローバル・ニッチ戦略の可能性|慶應義塾大学商学部教授 髙橋 美樹 (公益社団法人中小企業研究センター2013年報) (https://www.chukiken.or.jp/about/img/2013_01.pdf、2019年06月29日閲覧)

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