台湾で中国語の会社名を決める

そもそも台湾では会社名は必ず中国語で付ける必要があるのですが、それを抜きにしても台湾の人に親しんでもらうためには中国語名称が重要です。

中国語・台湾語でないと台湾人にはピンと来ない場合が多い

例えば、台湾の高級百貨店が2009年に開店した際、店名をイタリア語で「BELLAVITA(ベラヴィータ)」と命名したのですが、特に中国語名を決めなかったため、混乱が起きました。

日本語の場合、外国語はカタカナで表記すれば読めますが、台湾ではカタカナに相当する外来語表記用の文字がなく、ローマ字で書くしかありません。しかしローマ字で書いても台湾人はどう発音すればよいのか分からない場合も多いのです。

タクシーの運転手に「ベラヴィータ」と言っても「知らない」と返され、消費者も「店名何だっけ?」となり、結局店名が定着しないまま、みんなが呼び始めた非公式名称が「貴婦百貨(セレブ百貨店)」。

店名も定着しないのも影響したのか業績も振るわず、これはまずいと開店から10か月も経ってようやく公式中国語名称「寶麗(バオリー)」を決めたものの、やはり今でも非公式名称 「貴婦百貨」を使う人が多いようです。

やはり中国語・台湾語で名前を付けておかないと台湾人にはピンと来ない、覚えてもらえない場合が多いのです。

台湾で使われている「繁体字」を使う

会社名には台湾で使われている漢字を使う必要があります。 中国大陸で使われている簡略化された「簡体字」 と対比して「繁体字」と言われる場合が多いですが、台湾では「正体字」と呼ばれます。日本で言う旧字体とほぼ同じものだと考えていただいても良いと思います。

もちろん日本で作られた国字や簡略化された新字体、中国大陸で使われている「簡体字」は使えません。

中国語会社名の構成

「〇△◇」の構成は前から以下の通りとなります。

  1. 国籍(支店の場合のみ):日本企業が在台支店を出す場合、日本に本社があることを明確にするため、「日商〇△◇股份有限公司」や「日商〇△◇有限公司」など、国籍を示す「日商」が先頭に記載されます。
  2. 地域名(省略可能):例えば「台灣」とか「台北」とか「高雄」とかです。ちなみに国名ではありませんので注意が必要です。
  3. 固有名称(必須):ここが会社の固有名称の部分です。例えば「台灣三菱電機股份有限公司」の「三菱」が該当する部分です。
  4. 業務種別もしくは他社と区別可能な文字(省略可能):例えば「台灣本田汽車股份有限公司」の「汽車」 が該当する部分です。
  5. 商業組織もしくは産業を示す文字(省略可能):例を挙げると 「堂」、「記」、「行」、「號」、 「社」、「商行」、「實業」、「興業」、「產業」、「工業」、「商事」、 「企業」、「商社」 、「展業」、「商業」、「事業」等があります。
  6. 会社形態により 「〇△◇股份有限公司(株式会社相当)」 、「〇△◇有限公司(合同会社相当) 」などとなります。当たり前ですが、股份有限公司でないのに股份有限公司を名乗ることはできません。また日本と違い会社形態を前につける、いわゆる「前株」はできません。

(5)商業組織もしくは産業を示す文字は通常は5番目なのですが、「堂」、「記」、「行」、「號」、「社」に関しては慣習で(4)と順番が入れ替わり4番目となります。「社」を見ればわかると思いますが、これらは日本語で言うところの「○○屋」みたいなもので会社という概念ができる前から商業組織を指す単語だったことから、会社組織にしても「〇〇株式会社」と言わず「〇〇株式会社」というのが普通であることと似ています。

2018年11月08日に規則が緩和され、(2)地域名と(3)固有名称の順番を入れ替えても良くなりました。また(3)固有名称は漢字1文字、同じ漢字や単語の繰り返し、外国国名などを使ってはいけなかったのですが、その規定も削除されました。さらに(4)の業務種別は1種類しか記載できなかったのですが、2種類まで併記することが認められるようになりました。

日本語社名からの翻訳、意訳か音訳か

日本の社名が漢字の場合はそれを活かすことが多いですが、ひらがなやカタカナ社名だと悩ましい所です。弊社では社名の由来をお伺いして意訳するか、漢字の音だけを借用した音訳にするかを判断することが多いです。以下は台湾に進出している著名企業の例です。

日本語中国語発音意訳・音訳
タイガー魔法瓶虎記フー・ジー意訳
TDK東電化ドン・ディエン・ファ意訳
東レ東麗 ドン・リー 意訳+音訳
パナソニック松下 ソン・シャー意訳
バンダイ萬代ワン・ダイ意訳
マツダ馬自達マー・ツー・ダー音訳
ヤマト運輸雅瑪多ヤー・マー・ドゥオ音訳
ヤマハ山葉シャン・イエ意訳

(3)+(4)を組み合わせて変化を付ける

上記のうち、「(2)固有名称+(3)業務種別もしくは他社と区別可能な文字」は他社と重複はできません。 日本と違い、住所が違っていても、同じ社名は登記できませんので注意が必要です。

逆に言えば、(2)固有名称が他社と重複しても、(3)を組み合わせて違う文字列にすれば、重複しないわけです。折角思いついた思い入れのある名前を変えるのは抵抗がある場合もあるでしょう。その場合は(2)+(3)の組み合わせで変化させていけば良いわけです。

申請時は他社と重複したときに備えて会社名の候補は5つまで申請することができます。弊社でサポートする場合は申請を手伝ってくれる「プロ」が事前チェックをしてくれますので、足りなければ更に候補を増やしましょう。

例えば弊社の中国語名は最初「盤古有限公司」で考えていたのですが、他社と重複していたため、3の業務種別に単語を入れ 「盤古〇〇有限公司」で様々な名称候補を申請、最終的に「盤古科技有限公司」 となったのです。

とりあえず紛らわしい組み合わせは×

(2)+(3)の組み合わせで変化させる場合も色々ルールがあります。

例えば「(2)固有名称」の前に「新」、「好」、「老」、「大」、「小」、「真」、「正」、「原」、「純」、「真正」、「純正」、「正港」、「正統」等を付けて区別するのは認められません。例えば「原」は日本だと「元(もともと)」という意味です。「元〇〇会社」なんて紛らわしいですよね。他の字もそういう理由で認められないわけです。

また「管理處」、「研究中心」、「農會」、「漁會」、「公會」、「工會」、「研究所」、「大學」、「學院」、「寺廟」、「基金會」、「協會」、「慈善」、「志工」、「義工」、「社團」、「財團法人」など政府機関や公益団体などと誤認させるような名称もダメです。

他にもいろいろルールがあるのですが、原則紛らわしいのはダメということで覚えておき、詳細は政府機関や専門家と確認するのが良いでしょう。弊社に台湾会社・支店設立をお申込みいただいた場合は弊社でその辺はチェックします。

中国語や台湾語の語感・音感 をチェック

まず台湾で余り馴染みのない難読字は避けたほうが良いです。読み方が良く分からなければ親しみづらい社名になってしまいます。 あと日本語では問題なくても台湾では変な意味の漢字・漢語もあるので注意が必要です。

後は語感・音感の問題です。発音が縁起が悪いもしく変な意味の単語と類似していないか、言葉に強く、センスのある人に意見を求めましょう。 いくら日本語でも全ての日本人が上手く命名できるわけではないのと同じで、いくら台湾人でも中国語に関する知識が不足している、または言葉のセンスのない人に任せてはいけません。

不正競争・商標の問題は注意が必要

なお会社名が登記できても、不正競争上の問題が回避される事が保証されるわけではないので注意が必要です。 例えば他社と顧客が混同する恐れがある場合や、著名な会社や商標を使い、顧客を誤認させるのは、例え社名が登記されたとしてもNGです。

この辺がもし心配であれば、調査も兼ねて自社名を商標登録することが多いです。お金は多少かかりますが、日本でも一定の知名度がある社名場合、台湾で同じ社名が使えなかったり、商品ブランドとして使えないと困る場合もあるので、検討するべきだと思います。

この時点で英語の名称も考えておきましょう。台湾の場合は進出口廠商登記(輸出入事業者登記)で英語名称を登記することができます。海外との物やお金のやり取りがある場合は、正式な英語名称が無いとトラブルの元になるので、登記することをお勧めします。ちなみに日本だと日本語名称しか登記できませんので、英語名称はあくまで海外との取引のための便宜的なものでしたが、最近は英語の会社名を自社の定款に定めるのが一般的になって来ているようです。

台湾の場合は中国語名称と英語名称の関連性には余り規則がなく、中国語名称の意味から英語名称を決めている場合、発音から決めている場合、双方に余り関連性がなく英語名称を聞いただけでは中国語名称が分からない場合、など色々あります。それぞれ例を挙げてみます。

  • ジャイアント(自転車の世界的メーカ)
    中文:巨大機械工業股份有限公司
    英文:Giant Manufacturing Co. Ltd.
    元々は中国語の社名を意訳した「GIANT」ですが今は逆に中国語に音訳輸入され、台湾の販売子会社も「捷安特(ジェ・アン・トー)」が使われています。

[例3]華碩電腦股份有限公司(PCメーカ)
→ASUSTeK Computer Incorporated
※ASUS、英語名称はPegasusの後ろ4字から

[例1]台灣積體電路製造股份有限公司(半導体製造)
→Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited
※TSMC、中国語名称の意味から

どこの国でも会社名も会社の「顔」として非常に重要で、台湾では占いで会社名を決める人も結構います。私たちの場合は会社の名前でドメイン名が取れるかどうかなども考えたので、決めるまで2週間ほどかかりましたが、自分自身の会社としてまずは自分はどういう名前にしたいのかを考えるのが大事だと思います。

当相談所は、高度な日本語・中国語による調査能力と柔軟な実行力で台湾会社・支店設立をサポートします。
参考文献 (クリックすると一覧を表示)
  • 公司名稱及業務預查審核準則 (2018年11月08日修正)
  • 放寬公司命名限制及申請程序 (https://law.ndc.gov.tw/ResultContent.aspx?ID=673、2018年11月08日公開、2019年02月05日閲覧)
  • BELLAVITA 中文名難產10個月 梁家3姊妹 改喚寶麗幫 | 蘋果日報 (https://law.ndc.gov.tw/ResultContent.aspx?ID=673、2010年07月16日公開、2019年02月05日閲覧)

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