
台湾の昔の航空会社、CAT(民航空運公司)
まずこの写真をご提供いただいたイワマ様に感謝いたします。この写真は昭和30年代に羽田空港で撮影された台湾の昔の航空会社、CAT(民航空運公司)のコンベア880という機種です。
表と裏の顔
CAT(Civil Air Transport、民航空運公司)というのは、第二次世界大戦終結後の1946年に、米国CIAの支援の下、国共内戦が再び始まった中国で設立された航空会社です。民間の航空会社というのは表向きで、実際の業務は中国国民党軍の軍事物資や兵員の運搬支援業務が主でした。
その後中国国民党軍が台湾に撤退する際に、CAT以外の当時の中国の大手民間航空会社2社は共産党政権に投降。CATが国民党側についた唯一の航空会社となり、台湾に渡ったのです。
その後は事実上、中華民国政府所属の民用航空部門として扱われ、冷戦時代のアジアで、裏ではアメリカ軍向けの運送業務やアメリカや中華民国の諜報活動や秘密軍事活動の支援、表では中華民国の事実上のフラッグキャリアとして各地への国際便を運航していました。
終わりの始まり
そこまで事業を拡大していた会社が消滅したきっかけとなったのは、1968年2月16日に使用していた唯一のジェット機材(ボーイング727)を操縦ミスが原因と思われる事故で喪失したことです。これにより国際線が運航できなくなり、フラッグキャリアの地位も中華航空(チャイナエアライン)に奪われる結果となりました。
結果的に1975年に会社は解散しています。この年にはベトナム戦争が終結し、蒋介石総統が亡くなった年でもありますし、米国と中華人民共和国は1972年のニクソン大統領訪問後、対話を始めて数年たっていました。冷戦の構造が徐々に変わりつつあった時代にCATが無くなったのも、また歴史のいたずらなのかもしれません。
(参考資料)
- 民航空運公司資料館(2013年7月3日閲覧)
- 民航空運公司 – Wikipedia(2013年7月3日閲覧)